レーザは人工的に作り出された光のことで、「誘導放出による光の増幅」がその語源となっています。
本項では、まずは前提となる「光とは何か」及び「光の性質」について説明したうえで、「レーザ」について解説して
いきます。
「HPだけでは理解しきれない」「もっと詳しく知りたい」「実際に溶接機を触ってみたい」
そんなお客様は是非HPお問い合わせをご利用下さい!
※旧アマダウエルドテックは、アマダ微細溶接事業に再編されています。詳しくはこちらをご覧下さい。
光とは何か、その答えは「電磁波である」が正解となります。
電磁波には様々な種類があり、携帯電話の通信に使われる電波、物を温める赤外線、人の目に見える可視光、日焼けの
原因になる紫外線、レントゲン撮影で使われるX線など、全て電磁波です。
「波」とついているように、電磁波(光)は波長を持ちます。
波長とは下記図のように「山と山の間の長さ」、或いは「谷と谷の間の長さ」のことを指します。
この「電磁波であり波長を持つ」のが光、そしてレーザの特長です。
ポイント!
・光は電磁波であり、「波長を持つ」
1.光の主な性質
光の性質としては粒子性と波動性があり、以下の特徴を裏付けます。
・光は直進する ・光は反射する ・光は屈折する ・光は干渉する ・光は回析する
2.光の種類
光の種類は、大きく「自然光」と「人工光」に分けられます。
「自然光」の代表例は太陽光であり、長短様々な波長の光が混ざっています。
「人工光」の代表例となるのがレーザであり、自然光とは異なり波長が1つしかないのが特長です。
3.光の波長と色
光には様々な色があります。
この色の違いは波長の長短に起因するものであり、この波長の長短により人の目は様々な色の違いを認識します。
波長の単位はnm(ナノメートル)が使われ、人の目に見える範囲は約380nmから750nmの波長の光となり、
380nmより短いものは紫外線、750nmを超えるものは赤外線となり、目に見えない不可視光となります。
例)光の波長により曲がる角度(屈折率)が異なるというプリズムの特性を利用し、太陽光をプリズムにあてると
波長によって色が分解され、明確な色の違いとして見ることができます。太陽光は全ての波長を持っているた
め、その全てが集まると白色に見えます。
4.光の吸収と反射
物体に当てられた光は、吸収されたり反射されたりする性質を持ちます。
この性質は3項で述べた波長の違いとと共に、色の違いの認識に関わってきます。
例えば「リンゴの色が赤く見える理由」について、この光の性質をもとに考えてみましょう。
太陽からは前述の通り、いろいろな波長(色)の光が放出されています。人の目で確認できる七色の光は全てリンゴ
に当たりますが、その当たった光のうち、赤色の光だけが反射し、その他の光は吸収されます。
そして反射した赤色の光だけが人の目に入り、「赤」と認識されます。
全ての物体において光を受けた時に反射と吸収が起き、反射した光(波長)によって、
人は色の違いを見分けることができます。
レーザでも吸収と反射が発生し、溶接の良不良に大きく関わってきます。
ポイント!
・光は直進する性質を持つ。
・レーザは人工的に作り出された光である。
・波長の違いを、人の目では色の違いとして認識する。
・光は吸収と反射の性質がある。
1.レーザとは
冒頭で述べた通りレーザは人工的に作り出された単一波長の光で、「誘導放出による光の増幅」が語源となります。
誘導放出現象は、電子のエネルギー遷移がおき、その遷移分のエネルギーが光として放出される現象です。
2.レーザの発振
レーザを生み出す、出力することを「発振」と言います。
レーザを発振するために必要なユニットは「発振器」と呼ばれ、主に「励起源、レーザ媒質、共振器ミラー」で構成
されます。
3.レーザの発振原理/励起源の役割
レーザ発振に必要となるエネルギー供給源を「励起源」と言います。(エネルギーを供給することは「励起する」)
励起源には幾つかの種類があり、代表的なものは下記3種類になります。
電気:半導体レーザ(LD) →例)ファイバーレーザの発振に使用
光 :フラッシュランプ →例)YAGレーザの発振に使用
放電:気体(電子衝突) →例)炭酸ガスレーザの発振に使用
4.レーザの発振原理/レーザ媒質の役割
そもそもレーザは、ネオジウムに代表される「原子」が発する光を源に、それを増幅したものです。
このレーザを生み出す原子を閉じ込めた(ドープした)入れ物を「レーザ媒質」と言います。
代表的なものが2項の図になる「YAGロッド」と呼ばれる円柱状の結晶体です。
下記図にある通り、レーザ媒質内にドープされた原子は、原子核とそれを周回する複数の電子で構成されます。
この原子核を周回する複数の電子が、励起源からのエネルギー供給を受けて外側の軌道へ移動し、
これが基の軌道に戻る際にレーザの元となる光を発します。
それを共振器ミラーで増幅することでレーザとして発振されます。
5.レーザの発振原理/レーザ媒質の役割(誘導放出と反転分布)
ここで、レーザ媒質内で起こる現象について、もう少し詳しく解説します。
励起源からエネルギーを与えることを「励起する」といいますが、この「励起」により低いエネルギー状態(基底
状態)だった電子を、高いエネルギー状態(励起状態)に遷移させます。
高いエネルギー状態に遷移した電子が、その遷移分のエネルギーを放出する現象を「誘導放出」といいます。
誘導放出により発した光を増幅したものが「レーザ」となります。
この誘導放出ですが、「反転分布」という状態を作り出すことで起こる現象です。
「反転分布」は、高いエネルギー状態の原子数が、低いエネルギー状態の原子数を上回っている状態を指します。
この状態となったことで、レーザの元となる光を発します。
6.レーザの発振原理/共振器ミラーの役割
上で述べた誘導放出により発生した光は、増幅されることでレーザとして出力されます。
この増幅現象は「共振」と呼ばれます。この共振はレーザ媒質の両端に配置された2対のミラーの間で行われ、
そのミラーを「共振器ミラー」といいます。
7.レーザ発振の一例/YAGレーザの発振原理
2~6項で説明した内容について、YAGレーザの発振原理を基に下記の通り整理します。
①ランプを点灯させ、レーザ媒質内の原子を励起します。(反転分布の状態を作り出します。)
②レーザ媒質の両側にミラーが配置されており、ミラー間で励起により放出された光を増幅します。
③片側のミラーを半透過構造(光を少し透過させる)とし、これを出力側ミラーとします。
この出力側ミラーからレーザが出力されます。また、反対側は全反射構造とし、全反射ミラーとします。
④増幅された光が、出力側ミラーよりレーザとして出力されます。
8.レーザ発振の一例/ファイバーレーザの発振原理
2~6項で説明した内容について、ファイバーレーザの発振原理を基に下記の通り整理します。
①LD(レーザダイオード)を点灯させ、レーザ媒質内の原子を励起します。(反転分布の状態を作り出します。)
②レーザ媒質となるアクティブファイバーの両端がミラーの役割を果たし、
端面間で励起により放出された光を増幅します。
③片側の端面が半透過構造(光を少し透過させる)となっており、その面からレーザが出力されます。
④両端面間で増幅された光が、出力側ミラーよりレーザとして出力されます。
ポイント!
・レーザには優れた性質がある。(単色性/単波長、指向性、光干渉性/共振、高出力)
・誘導放出により生み出された光が、共振により増幅されたものを「レーザ」と呼ぶ。
・励起→反転分布→誘導放出→増幅(共振)、の順でレーザは発振される。
・レーザ媒質、励起源、共振器ミラーの3点を合わせて、発振器と呼ぶ。
光の一般的性質でも述べましたが、レーザも材料に当てると吸収と反射が発生します。
まず材料にレーザが当たると、材料表面の原子や分子が振動を起こし、熱が発生します。太陽光に虫メガネをかざすと
紙が燃えるように、レーザも材料に当てると大きく発熱します。レーザは太陽光とは異なり波長が単一のため、
発生する熱量も大きく1,000度以上にも達します。
これにより、溶融温度が約600~1500度となるアルミや銅、鉄さえも溶融させることが可能になるのです。
電子レンジのマイクロ波でモノを温めるのと同じ原理、とイメージして貰うと分かりやすいと思います。
この「レーザが当たる→材料表面でレーザを吸収(一部は反射)→原子が振動→熱が発生→材料が溶融」という
プロセスは、次ページの「レーザ溶接とは」に繋がる重要事項です。
材料(金属)がレーザにより溶融している様子を高速度カメラで撮影した動画が下にありますので、
ぜひご覧下さい。
・レーザとは
・レーザ溶接とは
・レーザ溶接機の基本構成
・レーザ溶接機の種類と特長
・レーザ溶接の品質管理
「HPだけでは理解しきれない」「もっと詳しく知りたい」「実際に溶接機を触ってみたい」
そんなお客様は是非HPお問い合わせへご連絡下さい!
また当社では、業界別や工法別にアプリケーションを紹介するページを開設しております。
基礎原理だけでなく、「どんなワークに何が出来るのか知りたい」という方はこちらもご覧ください。
業界別アプリケーション紹介
工法別アプリケーション紹介
ご不明点やサンプル実験のご要望があれば是非、最寄りの営業所までご連絡下さい!
皆さまからのお問い合わせをお待ちしております。
アマダ微細溶接事業の製品・製品の修理/復旧、および企業活動についてのお問い合わせ窓口をご案内しております。