抵抗溶接とは:定義

 金属に通電させた際の抵抗発熱を利用した溶接技術の1つのことで、次のような特長を持ちます。

 ①はんだなどの補助材料を使わないためコスト低減になるほか、リサイクルしやすい。
 ②自動化しやすく、作業者の熟練度をそこまで必要としない。
 ③レーザ溶接と比べるとイニシャルコストが抑えられる。

 抵抗溶接には様々な方法がありますが、最もオーソドックスな方法は以下図のようなものです。
 2枚の金属の板を上下の電極で挟み込み、加圧通電します。

 

 抵抗溶接の良否は「電流」と「抵抗」、そして「加圧」に特に大きく左右されます。
 本項では、まずそれらについて解説します。

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ジュール発熱と電流

抵抗溶接は通電時の「ジュール発熱」を利用し、金属同士を溶接する方法です。          


 このジュール発熱は、以下の公式により求められます。

 

 上記公式からいえることは、抵抗溶接を行ううえで最も影響を与える要素は「電流」である、ということです。
 もちろん、抵抗値や通電時間も関わりますが、電流はジュール発熱の形成に二乗で効いてくる要素です。
 この電流の正確な制御が、安定した溶接品質の必須要素なのです。


押さえておくべきポイント                             
 ・抵抗溶接は、通電時のジュール発熱を利用する。     
 ・特に電流が溶接に影響を与える要素である。 
                  
                

固有抵抗と接触抵抗

通電時の抵抗発熱を利用した溶接方法が抵抗溶接となりますが、この抵抗発熱には幾つかの種類があります。

 固有抵抗と接触抵抗
  抵抗とは「電気の流しにくさ」であり、この抵抗に対して電気を流すことで熱が生まれます。
  金属に通電(電気を流す)すると発熱するのは「抵抗(R)」があるためで、それぞれの金属が「固有抵抗」を
  持ちます。下記図のR2とR4がこの固有抵抗です。
  また、電極と被溶接物との間、そして被溶接物と被溶接物の間に発生するのが「接触抵抗」です。
  下記図のように被溶接物(2枚の金属の板)を上下から挟み込んだ場合、電極と被溶接物の間に発生するR1とR5が、
  被溶接物同士の間に発生するR3が、それぞれ接触抵抗となります。
  
  
 

加圧力と追従性

抵抗溶接においては電流が最も大きな要素ですが、これに加えて加圧力と追従性も溶接良否の大きな影響を与えます。

 加圧力
  上記で述べたように、抵抗溶接の発熱は電流に加えて抵抗(固有&接触)にも影響されます。
  固有抵抗は加圧力の影響を受けませんが、接触抵抗は異なります。適した条件ではない、例えば加圧力が低すぎた場合
  は接触抵抗が大きくなり、爆飛の原因になります。
  最適条件で加圧することで接触抵抗が安定させることは、溶接するうえでの前提条件となります。
  次項で説明する溶接ヘッド(加圧追従機構部)において、この加圧力を調整します。

 追従性
  追従性とは、「被溶接物の膨張と収縮の動きに合わせて、常に一定の力で加圧し続ける性能」のことです。
  この性能が悪いと被溶接物の膨張の押さえきることができず、スパッタや爆飛の要因となります。
  追従性も加圧力と同様に溶接ヘッド(加圧追従機構部)において調整します。
  また、追従性を良くするためには、適した剛性と質量を持ち、滑らかに動く溶接ヘッドが必要です。
  追従性が悪いと、被溶接物が軟化した時にヘッドの下降が追い付かず、加圧力が低下したことでスパッタを発生させる
  要因となります。
 

ナゲットの形成と拡散接合

主に、鉄系・SUS系同士の溶接でナゲットは形成されます。

 ナゲットとは
  合金層とも呼ばれ、溶接箇所に生じる溶融凝固した部分のことを指します。通常、被溶接物の境界面を中心に、
  細長い楕円形の形状をしています。境界面を中心にナゲットが形成される理由は、電極に接している面は熱引きが
  大きく、熱引きの少ない境界面が最も発熱するためです。また、このナゲットはシートセパレーションの効果により、
  電極の径以上の大きさにはなりません。
  
  

銅合金の溶接の場合は「拡散接合」となる

 拡散接合とは
  銅合金の場合は鉄系やSUS系とは異なり、固有抵抗の値が小さく通電による発熱が得にくい材料です。
  また熱伝導率は鉄系などよりも高く、折角の発熱がすぐに失われてしまいます。
  このため、銅合金を抵抗溶接する際はナゲットが形成されず、「拡散接合」と呼ばれる状態になります。
  加熱と加圧が続くことで境界面を横切って原子が拡散され、これにより金属的に接合されます。
  SUSなどと違い溶融接合にはなりませんが、銅合金の抵抗溶接では「拡散接合」となるのが通常です。
  また、電極にはタングステンやモリブデンを利用し、電極の発熱を被溶接物(銅合金)に伝えることで
  接合します。

  
 

抵抗溶接時の様子(ナゲット形成)

抵抗溶接時の溶融状態(ナゲットが形成される様子が確認できます)

その他の基礎知識はこちら

 ・抵抗溶接とは
 ・抵抗溶接の方法
 ・抵抗溶接機の基本構成
 ・抵抗溶接の5大条件
 ・抵抗溶接電源の種類と特長

 抵抗溶接の品質管理

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